2013-07-27

 町への道中で、一人の占い師とすれ違った。占い師は一見するといたって普通の旅人の風貌をしており、占いをするような雰囲気はなかった。彼は突然私たちに声を掛けると、簡単に自分の身分を明かし、勝手ながらあなたたちを占わせてくれと言う。そして次々に私たちと数秒ずつ目を合わせてから静かに目を閉じ、少しの間を置いて、ゆっくりとした声で「きっと安全に旅を続けることができるでしょう」と告げた。面食らいながらも私は「はぁ……それはどうも」と返す。占い師は「突然すみませんでした。旅をする方々に何か危険なことがありそうなとき、占いでわかることがあるんです」と言った。仲間の一人が「当てたことがあるのか?」と訊いた。「危険ってどんなものだ」「盗賊に遭遇したり、悪天候に見舞われたり、そんな類いのものですね」「なるほど、そりゃごめんだね」「ありがとう」口々に告げ、行き違った。

 いや、旅をする夢を見たのは確かで、大学生の身分で合宿に行く道中みたいな感じだったのだ。占い師は実際は「この中で大学二年生の人はいますか?」と私たちを見回しながら訊くので、私と数人が手を挙げると、彼は「あなたたちは無事進級できるでしょう。良かったですね」と言うのだ。私たちは安心して旅を続けるのだけど、たとえば私はもう二年生ではないし、夢だからいろんな部分がちぐはぐだった。森を歩いていて、樹々がとても高かった。イチョウの樹の倍くらいの高さの針葉樹で、冬だったのか葉が付いておらず、地面には枯葉が積もっていた。しばらく歩いて宿泊先に着くと、仲間の一人がコンビニに行きたいと言い出して、すぐに出かけることになった。コンビニは山を十五分ほど下ったところにあることを事前の情報で知っていた。とまぁこんな具合だ。よくわからなかった。宿は純和風の造りで、細長く入り組んだ構造をしている。見晴らしの良い位置に建物が点在していて、それを結ぶように玄関から長い渡り廊下が山の尾根に沿って伸びている。一番大きいのは玄関のある建物で、食堂や浴場などが集まっている。廊下を歩いた先に宿泊棟があるというわけだ。

 建造物の記述ってどういう順序だろう。大まかな構造、表面的なデザイン、雰囲気。人が頭の中で思い浮かべることができる単語から与えて、そのあとで細部を補完していく、という原則に従うなら、たとえば「高層マンション」「旅館」「駅前の商業ビル」「2LDKの部屋」「和室」「洋室」「オフィス」「コンクリート」「木造」などという想像しやすい枠を与えてから、特徴として「ガラス張り」だの「カラフルなデザイン」だの「屋上に観覧車がある」だの書き足していく。必要十分な情報量を書くのは難しいのだけど、「自分が想像したときにどのような特徴に意識が向くか」を考えればよい。印象の問題。遊園地に行ったときに「今日は天気いいね~」や「今日は人が多いね~」と思ったのなら、その点を書くべきだということになる。その意味では風景を見て「気付いたことを言語化する」練習をすれば自然と描写の力は上がる、と思う。一人ではなく、話ができる人と一緒に歩いて見るのが良い。「あ、あれ見て」と気付いたことについて会話ができると楽しいからだ。コミュニケーションの第一歩でもあるし。

 順接など連続的な接続詞を使って延々と文章を繋げてしまいがちだ。その日の出来事について、次々に起こったことを書くとすると、どうしても一文で書き上げようとしてしまう。たとえばこんな感じ。

 「昨日の夜はお酒を飲みに出てしまい、帰ってきて牛丼を食べてから5時くらいに寝て、昼過ぎにようやく起きて、だるい気分になりながらもコンビニに行って食料を買い込み、夕方はネットサーフィンで潰し、夕飯にレトルトのカレーを食べて、その後もネットサーフィンで潰し、少し絵を描いてみる試みをして、こんな時間になった。」

 こう書くとすべて昨日の夜の話のようにも見えるし冗長な印象もある。以下のようにすべきだろうか。

 「昨日の夜はお酒を飲みに出て、帰ってきたのは4時くらいだった。持ち帰りをした牛丼で空腹を満たしてから寝たのは5時のことで、昼過ぎまで惰眠を貪っていた。起きてだるい身体を何とか動かしながらコンビニに行って食料を買い込んでから、夕飯にレトルトのカレーを挟みつつネットサーフィンで一日を潰した。夜は少し絵を描く試みもしていたら、こんな時間になった。」

 完全に文章を書く上での試行錯誤を書き連ねているだけの記事になっているのだけど、たまにはそういうのも良い気がするのであまり削っていない。眠くなってきた。月曜の試験の対策が終わっていない。今日の夜なんとかしよう。月末締め切りのレポートが終わっていない。前日夜になんとかしよう。

 

 書いている途中でいきなりwindowsが落ちて、文章が失われてしまったように見えて、ため息を付きながら書き直したのだけど、書き終えて投稿しようとページを開いたら元の内容が生きていた(ここまでの文章)。いちおう以下に書き直したものも置いておく。

 

2013-07-27

 町への道中で、一人の占い師とすれ違った。占い師は一見すると普通の旅人のような格好をしていて、彼は突然私たちに声を掛けると、簡単に自分の身分を説明し、勝手ながらあなたたちを占わせてほしいと言う。そして占い師は次々に私たちと一呼吸ずつ目を合わせた後、静かに目を閉じ、少しの時間黙りこんでからまた私たちを見て、「きっとこの後も安全に旅を続けることができるでしょう」と告げた。私は少し面食らいながらも「はぁ……それはどうも」と返す。「いきなりすみませんでした。ときどきこうして道行く方を占わせていただいてるのです。もっぱら悪いことがありそうだと当てられて良いことは当てられないので、申し訳ない限りなのですがね」占い師は軽く頭を下げて言った。仲間の一人が「悪いことって例えば何だ?」と訊く。「盗賊に襲われたり大雨に遭ったり、ですかね」「へぇ、なるほどな」

 そうして行き違ったのだが、町までは良いことも悪いことも特に起こらなかった。占い師の言葉は当たったと言えるかもしれない。

 いや、実際は、大学生の私たちが部活の合宿に行くとかで森を歩いているとその占い師が声を掛けてきて「私、占い師なんですよ」と言って私たちを見回し、「この中で二年生はいますか」と尋ねるのだ。私と数人が手を挙げると、彼は「安心してください。あなたがたは無事三年生に進級できるでしょう、良かったですね」と言うものだから、「そりゃ良かった。せいぜい頑張りますよ」と思いつつも口から出ないようにして別れたのだ。そのあと宿泊先の建物の構造について書く話を書いていたのだが、一度データが消えてしまってここまでの文章も二周目で(一度書いた文章ですぐ再現するのにあまり時間がかからなかったから助かった)、さらに続ける気力は失ってしまったので、これくらいにしておこう。

 

とまぁこんな感じだ。余計に時間を食ってしまった。反省。

 

では。

 

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