2013-09-13

 王だから玉座に座るのではなく、玉座に座っているから王なのだ、と新しい王は言った。近くに鳩の死体があった。開いてきた窓から烏が入ってきて、王の肩に乗って啼いた。一人の侍女が王座まで近寄ってひざまずいた。烏はその黒く大きな翼を広げ、ゆっくりと羽ばたいた。その間、王は肘を突いてただ静かに正面を見据えているだけで、従者たちには一瞥も与えなかった。王の座など興味がないのだと言うかのように、「雨が降りそうだな」と呟いた。

 外側から内側に染み込んでいった黒は、まだ中心までは届いていなかった。まだ国民にはわずかな楽観があった。誰もが平穏な日常というものを維持しようと無意識に気を張っていた。国王が誰であろうと我々の生活は変わらないのだ、と信じていた。しかし新たな王の即位は、万力で少しずつ締め付けるかのように人々の心をゆっくりと壊していく。

 その場にいた人間以外は、その簒奪の真相を知らなかった。直接見た者でさえ、事態をうまく理解できなかった。気が付いた時にはかつて王だった男の死体が無惨に横たわっており、たった今王になった男が王座に浅く腰掛けていた。

 

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