2013-10-26

 家にいた。基本的に寝ていた気がする。ゲームやってるのを見ていた。夜は外に出て食べた。それだけで、でもそのあとはずっと自分の生き様について考えていた。

 

 忌憚なき意見をお聞かせくださいと書いてある紙を見つけ、奇譚とはいや忌憚とは何ぞやと考えながらメモを書いていった。客のクレームに真摯に対応する企業はしっかり伸びるというのはよく言われることで、しかし私の意見が本当に参考になるのかは疑問だが、まぁでも店員のサービスは良かったのにもかかわらずある一点が残念だったのは確かだから、指摘してみることにした。

「店内に幽霊が多すぎます」

 たくさんいたので、一点という表現は間違っているかもしれない。良い霊も悪い霊もいて、たとえば店員の一人には守護霊が三体も憑いていたり、店の隅に地縛霊が複数たむろしていたり、店の入口付近で浮遊霊がうろうろしていた。ここまで霊に溢れる店は見たことがなく、その理由が気になったのだが、偶然に偶然が重なって集まってしまったというだけらしい。悪い霊は祓ってもらう必要がある。指摘して気付いてもらえればと思い、テーブルに紙を残し店を出た。

「店長、こんな一言カードがありました」

 店員の一人は上司にその紙を見せた。店の長であるその男はざっと目を通し、気味悪く思ったが、深く考えないようにした。その男には霊感がなかった。加えて言えば他の店員も全員霊感がなかった。ただ、そういえばこの店の妙な噂話は引き継ぎの際に他の社員から聞かされたことがある。たとえば店の土地は不幸な事故があった場所の跡地であることや、開店当初の社員が不自然な自殺をしたことなどだ。しかし重ねて言えば、その男には霊感がなく、そういった与太話には耳を貸さない性分だった。

 私が一ヶ月の後に同じ店を訪れたとき、店内からは幽霊が完全に消えていた。祓われたのだろう。嬉しく思い、またサービスも好印象だったため、前回と同じように意見の紙を書いた。

「幽霊が完全にいなくなってました。料理も美味しく頂けました」

 店員はそれを見て恐怖を感じた。その店員には霊感がなかったが、龍脈についての知識があった。霊は龍脈の微弱な気(山の尾根でなくとも土地の気はすべての場所に僅かながら存在する)と連動して現れるのだが、霊が消えてしまったということは、この土地の気が完全に消えてしまったことを意味する。気の無い土地は基本的に死地であり、霊はおろか神気の類いまで近寄らなくなってしまう。しかしまた、なぜ気が枯れてしまったのだろうか。理由としては、気を吸い取ってしまうタイプの霊や人間がこの場所を訪れた可能性などが考えられる。はっきりとはわからないが、もしかしたらこの紙を書いた男がそうだったのかもしれない。無自覚に地気を荒らす人間ほど質が悪い存在はいない。困ったものだ。

 

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